令和4年度から「キャリアアップ助成金」の内容が一部変更となりました!
今回は、「キャリアアップ助成金」の令和4年度の変更点や申請のポイントについて解説します。
目次
「キャリアアップ助成金」とは?
そもそも、「キャリアアップ助成金」とは、どのようなものなのでしょうか?
「キャリアアップ助成金」は、有期契約社員やパート社員、派遣社員などのいわゆる非正規社員の企業内でのキャリアアップを促進するために、対象社員を正社員にしたり、処遇改善の取り組みを実施した事業主に対して支給するものです。
労働者の意欲向上、能力向上を図り、優秀な人材確保への取り組みのために、活用している企業は多いようです。
「キャリアアップ助成金」は、以下のような複数のコースがありますが、ここでは多く取り扱われている「正社員コース」に絞って解説を行います。
支給対象となる企業は?
「キャリアアップ助成金」の対象となり得る企業は、次の通りです。
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厚生労働省管轄の雇用関係の助成金は、雇用保険料を財源にしているため、助成金の支給対象となる企業は「雇用保険の適用事業所」である必要があります。
つまり、一人でも雇用保険の適用対象となる従業員を雇用している事業主が対象となり得るということですね。
支給申請までの大まかな流れは後述しますが、正社員への転換をする前に、「キャリアアップ管理者」や「キャリアアップ計画期間」などが記載された「キャリアアップ計画書」を作成し、管轄労働局の認定を受けておく必要があります。
【キャリアアップ管理者とは?】「キャリアアップ管理者」とは、有期雇用労働者等のキャリアアップに取り組む者として、必要な知識および経験を有していると認められる者をいいます。 実務的には、事業主自身や会社役員などが「キャリアアップ管理者」になることが多いようです。 「キャリアアップ管理者」を決めたら、「キャリアアップ計画書」へその旨を記載しておきましょう。
【キャリアアップ計画期間とは?】「キャリアアップ計画書」には、有期雇用労働者等のキャリアアップに向けた取り組みを計画的に進めるため、今後のおおまかな取り組みイメージ(対象者、目標、期間、目標を達成するために事業主が行う取り組み)をあらかじめ記載するものです。 「キャリアアップ計画期間」とは、その計画書で定めた「目標を達成するために実施することが出来る期間」のことで、通常は、3年~5年以内で定めておきます。 |
4の条件の通り、対象労働者のキャリアアップに当たって、雇用契約書や出勤簿、賃金台帳などにより、その労働条件や勤怠状況、賃金支払状況等を客観的に証明できるようにしておくことも重要ですね。
支給申請の流れは?
「キャリアアップ助成金(正社員化コース)」を申請し受給するための大まかな流れは、次の通りです。
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まずは、事前に「キャリアアップ計画書」を作成し、管轄労働局長へ提出をしておきます。
「キャリアアップ計画書」の提出のタイミングは、正社員転換日の前日までにすれば足りますが、労働局からの認定を受けるのに時間がかかる場合があるため、少なくとも「正社員転換日の1カ月以上前」など、余裕をもって提出しましょう。
同時に、現行の就業規則に「正社員への転換制度」がない場合は、条文を追加し、必要に応じて労働基準監督署への届出を行っておきましょう。
管轄労働局長の認定を受けたら、6か月以上雇用する有期契約社員等の正社員転換を実施します。
この時に、3%以上の賃金アップも同時に実施します。
(※3%アップの対象となる賃金は、基本給や固定で支給する諸手当のみです。時間外割増賃金や通勤手当、住宅手当、精勤手当等は対象にならないので注意が必要です。)
正社員への転換後、6か月以上雇用継続したら、時間外割増賃金等も含めて、すべての賃金が支払われていることを確認しておきましょう。
正社員転換後、6か月の賃金を支払った日の翌日から2カ月以内に、助成金の申請をします。
申請期限を過ぎてしまうと、助成金の受給ができないので注意が必要です。
上記の1~6までの流れで実施しますので、実際に助成金の申請をすることが出来る時期は、「キャリアアップ対象となる従業員が入社してから、早くても1年以上たってから」ということになりますね。
令和4年度の変更点は?
「キャリアアップ助成金(正社員化コース)」は、令和4年度から複数の変更点があります。
印象としては、より厳格化されたというイメージですね。
変更点1.正社員への転換助成の一部廃止
「キャリアアップ助成金(正社員化コース)」は、有期契約社員やパート社員等を正社員等へ転換した場合に、支給対象となります。
例えば、①有期契約社員から正社員へ転換するパターン、②有期契約社員から無期契約社員へ転換するパターン、③無期契約社員(パート社員等)から正社員へ転換するパターンと、3つの種類が存在していました。
ですので、今までは「有期契約社員」から「無期契約社員」へ転換するだけで、正社員に転換していない場合でも支給対象となっていました。
その部分が、令和4年度から廃止となり、①有期契約社員から正社員へ転換するパターンと、③無期契約社員(パート社員等)から正社員へ転換するパターンの2種類のみとなりました。
(厚生労働省,2022,LL040331 No.3により引用)
いずれにしても、令和4年度からは、正社員への転換が必要ということになりますね。
ちなみに、令和4年度の新条件は、「令和4年4月1日以降に正社員転換を実施する場合」が適用されます。
変更点2.「正社員の定義」の変更
令和4年度から、「正社員の定義」が以下のように変更になりました。
(厚生労働省,2022,LL040331 No.3により引用)
今までは、「同一の事業所の正社員に適用される就業規則が適用されている労働者」が正社員の定義でした。
つまり、正社員の定義を就業規則にて明記しており、その内容と一致していれば正社員と認められるということです。
また、上記では書かれていませんが、正社員と認められるためには、「無期雇用+フルタイム勤務者」である必要があります。
それが、今回の改正で、正社員の定義が上記の表のように変更になりました。
どういうことかというと、今までの正社員の定義に加え、「賞与または退職金の制度」が適用され、かつ、「昇給の制度」も適用されている者に限られるということになりました。
今までは、賞与や退職金のない正社員でも、就業規則に規定されている正社員(「無期雇用+フルタイム勤務者」)であれば、正社員という風に認められていたのが、さらに「賞与または退職金」かつ、「昇給」の規定も必要になってくるということになりますね。
ちなみに、この改正が適用されるのは、「令和4年10月1日以降に正社員転換した者」ですので、令和4年9月までに正社員へ転換していた人については、現行の定義が適用されるということが大きなポイントです。
変更点3.「非正規雇用労働者の定義」変更
令和4年度から、「非正規雇用労働者の定義」が以下のように変更となりました。
(厚生労働省,2022,LL040331 No.3により引用)
今までは、「6カ月以上雇用している有期または無期雇用労働者」が非正規雇用労働者の定義でした。
つまり、就業規則の記載内容ではなく、上記の要件で判断されるということです。
非正規雇用労働者の定義は、パンフレット等にて正式に定められています。
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それが、今回の改正で、非正規雇用労働者の定義が上記の表のように変更になりました。
こちらも、どういうことかというと、今までの非正規雇用労働者の定義に加え、「賃金の額や計算方法が正社員と異なることが就業規則等にて確認できること」が必要になりました。
具体的には、「正社員には賞与や昇給制度があるが、非正規雇用労働者には賞与や昇給制度がない」ということが、就業規則等で明示されていれば認められるということでした。
また、「非正規雇用労働者に適用される就業規則の適用を6か月以上受けている」必要があることから、例えば、令和4年10月1日に正社員転換を実施する予定の方であれば、少なくとも、令和4年4月1日までに新たな就業規則を整備しておく必要がありますね!
ちなみに、「正社員の定義の変更」同様、この改正が適用されるのも、「令和4年10月1日以降に正社員転換した者」ですので、令和4年9月までに正社員へ転換していた人については、現行の定義が適用されるということが大きなポイントです。
まとめ
いかがでしたか?
イメージとしては、支給要件がかなり厳格化されたように感じますし、より正社員としての待遇が引き上げられたのではないでしょうか。
以上、令和4年度から変更となる「キャリアアップ助成金」のポイントでした!
現時点できちんと対応をしていない企業は、かなり不支給が出てくる可能性が高いです。
今回の改正に対応できるよう、是非、今からでも準備を進めていきましょう(^^)
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