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労働安全衛生法の健康診断の実施とは?
労働安全衛生法(第66条)では、事業主は従業員に対して、医師による健康診断を行わなければいけないとされています。
労働法では、健康診断の実施は義務ですが、健康診断を実施して本採用をするか否かを判断することが目的ではありません。
定期的な健康診断の実施を通して、従業員の健康管理を行うことで、個人ごとに現在の健康状況を把握・調査し、適切な配置転換を行うこと。
そして、従業員が健康を維持しながら、長期安定的に就業することができるようにすることが本来の目的です。
いざ、健康診断を実施するとなった場合は、具体的にどのように進めて行けばいいのでしょうか?
このページでは、健康診断を行う場合の基礎知識やポイントについて解説していきます!
健康診断を行うべき事業主の範囲は?
健康診断を行うべき事業主の範囲は、従業員を一人でも雇用するすべての事業主です。
企業規模や、個人事業主、法人を問わず、従業員を一人でも雇用するすべての事業主が対象になるということがポイントですね。
健康診断を受ける必要のある従業員の範囲は?
健康診断の対象となる従業員の範囲は明確に定められています。
具体的には、次の①と②のいずれも満たす従業員が対象となります。
① 労働時間が通常の労働者の労働時間の4分の3以上である者 ② 1年以上使用される予定の者、契約更新により1年以上引き続き使用されている者、または6月以上「(※)特定業務」に従事する予定の者 |
※「特定業務」とは?
「特定業務」とは、深夜業や、人体の健康に有害な業務で、労災などのリスクが特に高い業務です。
イ 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
ロ 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
ハ ラジウム放射線、エツクス線その他の有害放射線にさらされる業務
ニ 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
ホ 異常気圧下における業務
ヘ さく岩機、鋲打機等の使用によつて、身体に著しい振動を与える業務
ト 重量物の取扱い等重激な業務
チ ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
リ 坑内における業務
ヌ 深夜業を含む業務
ル 水銀、砒素、黄りん、弗化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務
ヲ 鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務
ワ 病原体によつて汚染のおそれが著しい業務
カ その他厚生労働大臣が定める業務
① たとえは、通常の労働者(正社員など)の所定労働時間が週40時間である場合は、週30時間未満のパート社員は健康診断の対象外です。社会保険の加入基準と同じ取り扱いですね。
② 日雇い労働者や、有期契約社員など、1年以上雇用される見込みのない従業員は対象外です。
上記の通り、社長や役員、同居の親族や対象外の従業員等は健康診断を実施する必要はありません。
ただし、義務ではありませんが、「短時間労働者(労働時間の4分の3未満)に対しても実施することが望ましい」とされていますので、会社の状況や本人の希望等に応じて実施していきましょう。
健康診断を行う時期は?
では、健康診断は、いつの時期に、どのくらいのペースで行う必要があるのでしょうか?
【一般的な健康診断】
基本的に、一般の労働者の場合は「雇入れ時」と、「1年以内ごとに一回」のペースで、健康診断を行う必要があります。
【一般健康診断の種類】 | 【一般健康診断の実施時期】 |
「雇入れ時の健康診断」 | 雇入れの際 |
「定期健康診断」 | 1年以内ごとに1回 |
「雇入れ時の健康診断」の実施時期について、具体的に決められているわけではありませんが、「従業員が入社して業務につく前まで」に、もしくは「入職して3ヶ月以内」には済ませておきましょう。
雇い入れ時の健康診断は、健診結果により本採用の合否などを判断するものではありませんが、入職予定の職務に適しているかどうかを判断し、適切な配置転換を行うために必要なものです。
「定期健康診断」については、「雇入れ時の健康診断」から1年以内に行えば足りますが、全従業員に対して、一斉に健康診断の時期を定めている場合は、毎年決まった時期に行うようにしましょう。
ただし、所属部署や、業務の状況、医療機関への予約状況などによっては、毎年同月に実施することが困難な場合もありますので、できる限り大幅なずれがないように調整して実施していきましょう。
【特殊・特別な健康診断】
「特定業務」に従事する従業員などは、例外的に以下のルールで健康診断を行う必要があります。
【一般健康診断の種類】 | 【対象となる従業員】 | 【一般健康診断の実施時期】 |
「特定業務従事者の健康診断」 | 「(※)特定業務」に従事する従業員 | 配置替えの際、6ヶ月以内ごとに1回 |
「海外派遣労働者の健康診断」 | 海外に6カ月以上派遣する従業員 | 海外派遣の際、帰国後国内業務に従事する際 |
「給食従業員の検便」 (伝染病保有菌者発見のための細菌学的検査) |
食堂や炊事場における給食の業務に従事する従業員 | 雇い入れの際、配置替えの際 |
夜勤勤務などの深夜業(特定業務)や、食堂などの給食業務に従事する従業員は、一般の労働者と健康診断のルールが異なるので、注意しておきましょう。
また、その他にも、次の有害な業務に常時従事する従業員は、それぞれ特別な健康診断を実施する必要があります。
【健康診断の種類】 | 【対象となる従業員】 | 【健康診断の実施時期】 |
「特殊健康診断」 | ・屋内作業場等における有機溶剤業務に常時従事する労働者(有機則第29条) ・鉛業務に常時従事する労働者(鉛則第53条) ・四アルキル鉛等業務に常時従事する労働者(四アルキル鉛則第22条) ・特定化学物質を製造し、又は取り扱う業務に常時従事する労働者及び過去に従事した在籍労働者(一部の物質に係る業務に限る)(特化則第39条) ・高圧室内業務又は潜水業務に常時従事する労働者(高圧則第38条) ・放射線業務に常時従事する労働者で管理区域に立ち入る者(電離則第56条) ・除染等業務に常時従事する除染等業務従事者(除染則第20条) ・石綿等の取扱い等に伴い石綿の粉じんを発散する場所における業務に常時従事する労働者及び過去に従事したことのある在籍労働者(石綿則第40条) |
雇入れ時 配置替えの際 6月以内ごとに1回 (じん肺健診は管理区分に応じて1~3年以内ごとに1回) |
「じん肺健診」 | ・常時粉じん作業に従事する労働者及び従事したことのある「管理2」または「管理3」の労働者(じん肺法第3条、第7~10条) (注:じん肺の所見があると診断された場合には、労働局に健診結果とエックス線写真を提出する必要があります。) |
|
「歯科医師による健診」 | ・塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、弗化水素、黄りんその他歯又はその支持組織に有害な物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所に おける業務に常時従事する労働者(安衛則第48条) |
健康診断の実施項目は?
一般健康診断の法定項目は、次の通り定められています。
健康診断を実施する医療機関によっては、法定項目を満たしていない場合があります。
法定項目を満たしているかどうかを必ず事前にチェックしておきましょう!
【雇入れ時の健康診断の法定項目】
【「雇入れ時の健康診断」の法定項目】 |
1既往歴及び業務歴の調査 2自覚症状及び他覚症状の有無の検査 3身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査 4胸部エックス線検査 5血圧の測定 6貧血検査(血色素量及び赤血球数) 7肝機能検査(GOT、GPT、γ―GTP) 8血中脂質検査(LDLコレステロール,HDLコレステロール、血清トリグリセライド) 9血糖検査 10尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査) 11心電図検査 |
【定期健康診断の法定項目】
【「定期健康診断」の法定項目】 |
1既往歴及び業務歴の調査 2自覚症状及び他覚症状の有無の検査 3身長(※2)、体重、腹囲(※2)、視力及び聴力の検査 4胸部エックス線検査(※2)及び喀痰検査(※2) 5血圧の測定 6貧血検査(血色素量及び赤血球数)(※2) 7肝機能検査(GOT、GPT、γ―GTP)(※2) 8血中脂質検査(LDLコレステロール,HDLコレステロール、血清トリグリセライド)(※2) 9血糖検査(※2) 10尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査) 11心電図検査(※2) |
(※2)定期健康診断については、以下の項目については、それぞれの基準に基づき、「医師が必要でないと認める場合」に、省略することができます。
省略することができる項目は、医師が総合的に判断するものですので、自己判断や事業主の判断のみで省略することはできませんので、注意が必要です。
【省略することができる項目】 | 【項目を省略することができる者(医師が必要でないと認める場合に限る)】 |
身長 | 20歳以上の者 |
腹囲 |
|
胸部エックス線検査 |
40歳未満のうち、次のいずれにも該当しない者
|
喀痰検査 |
|
貧血検査、肝機能検査、血中脂質検査、血糖検査、心電図検査 | 35歳未満の者及び36~39歳の者 |
(注:特殊健康診断等については、それぞれの健診ごとに特別な健康診断項目が定められています。)
健康診断を行う医療機関は?
健康診断の実施は、どの医療機関で行えばいいのでしょうか?
健康診断を受診する医療機関は特に定められていないので、会社や自宅近くの任意の医療機関や保健センターなどで受診することができます。
実際に健康診断を受診しようとする際は、事前に医療機関等へ問い合わせ、会社による健康診断を受診することは可能か?
一般健康診断の法定項目を満たしているかどうかを、必ず確認しておきましょう。
【協会けんぽの生活習慣病予防健診】
健康保険の被保険者(35~74歳に限る)である従業員の場合は、協会けんぽの実施する「生活習慣病予防検診」に登録している医療機関で、協会けんぽからの費用補助(自己負担上限:5,282円)を受けて健診を受診することができます。
「生活習慣病予防検診」の一般健診の項目は、法定健診を満たしていますし、「胃部エックス線検査」が含まれていますので、かなりお得に受診することができます。
※協会けんぽへ加入している企業であれば、毎年3月頃に緑の封筒で案内が届いているはずです。
詳しくはこちらをご覧ください。↓
協会けんぽの「生活習慣病予防健診」を受診できる医療機関や空き状況などは、以下のとおり、ネットから検索が可能です。
参考に、「広島県」の医療機関はこちらから検索が可能です。↓
生活習慣病予防健診実施機関一覧 | 都道府県支部 | 全国健康保険協会
受診する医療機関が決まったら、従業員ごとに医療機関へ直接予約を行います。
健康診断の費用は会社負担?
【健康診断の費用負担】
健康診断の費用は、基本的には会社が全額負担する必要があります。
ただし、法定外の健診項目(オプションなど)を従業員の希望で行う場合や、従業員が個人的に健康診断を受ける場合は、会社がその費用を負担する必要はありません。
また、一般健康診断の結果により再検査となった場合でも、再検査を実施する義務は特にありません。
したがって、再検査を受けるかどうかは、本人の判断に委ねられています。
ただし、事業主は従業員の健康を維持するために、再検査を受けるよう促すことが必要です。
再検査の費用についても事業主が負担する必要はありませんが、業務上の必要があるにもかかわらず、なかなか再検査を受けようとしない従業員に対して、時間内に受診することを促したり、費用を事業主が負担するなどという方法も考えられます。
【健康診断に要した時間分の賃金負担】
では、健康診断に要した時間分の賃金も、事業主が負担する必要があるのでしょうか?
結論から言うと、健康診断に要した時間分の賃金を事業主が負担する義務はありません。
したがって、時間分の賃金を負担するか否かについては、労使の話し合いによって決める必要があります。
ただし、健康診断の実施義務や費用負担義務が事業主にあることを考えると、従業員にスムーズに健康診断を実施してもらうようにするため、所定労働時間内に健康診断を行い、その時間分の賃金を事業主が負担することが望ましいとされています。
健康診断実施後にやるべきことは?
健康診断を実施した後は、それで終わりではなく、本人への通知や、健診結果の保存、健診結果に応じて適切に対応する必要があります。
【本人へ健診結果を通知する】
健診結果が会社に届いたら、必ずその内容を本人に通知する必要があります。
医療機関によっては、会社控と本人控えがそれぞれ送られてくることもありますし、1枚になっている場合もあるので、その場合はその控えを必ず本人へ通知しましょう。
健康診断の結果は、個人情報になりますので、取り扱いには十分注意する必要があります。
会社は、健康診断の結果に基づき適切な対応をとる必要がありますが、その情報共有は必要最小限とし、情報漏えいなどが起きないよう細心の注意を払う必要があります。
【健診結果の保存義務】
健康診断の結果が届いたら、従業員ごとに「健康診断個人票」を作成し、以下のとおり、健康診断の種類ごとに保存期間(一般的には5年間)が定められています。
特殊健康診断の種類によっては、40年間など、長期の保存が必要になる場合がありますので、保存期間は必ずチェックしておきましょう。
「健康診断個人票の作成」
「健康診断個人票」は、基本的には会社で作成する必要がありますが、医療機関等から送られてくる健康結果が、「健康診断個人票」の形式になっている場合は、そのまま「健康診断個人票」として利用することができます。
「健康診断個人票」は、必要な項目が記載されていれば形式は自由ですが、以下の様式を利用して作成することも可能です。
労働基準監督署の調査が入ったときや、労災事故が発生したときなどに、提出を求められることがありますので、必ず作成して保存しておきましょう。
【健診結果に基づく適切な対応を行う】
◆医師等からの意見徴収
健康診断の結果に基づき、健康診断の項目に「異常の所見のある」従業員について、従業員の健康を保持するために必要な措置について、医師(歯科医師による健康診断については歯科医師)の意見を聞かなければなりません。
つまり、「従業員の業務内容や働き方を勘案して、健康を保持していくために、事業主はどのような配慮が必要か」ということについて意見を聞く必要があります。
意見を聴取する医師等については、産業医がいる企業は産業医へ相談します。
産業医の選任義務がない50人未満の事業場は、労働者の健康管理に必要な知識を有した医師に相談するか、スポットで産業医の面談を受けることも可能です。
◆医師等の意見に基づく適切な措置
上記による医師等の意見を踏まえつつ、その必要があると認めるときは、「作業の転換、労働時間の短縮等の適切な措置」を講じなければなりません。
具体的には、「労働時間の短縮、時間外労働の制限、作業転換、深夜業の回数減少」などを行います。
また、休暇の付与や、休職の手続きを行う場合もあります。
◆健診結果に基づく保健指導
健康診断の結果、特に健康の保持に努める必要がある労働者に対し、医師や保健師による保健指導を行うよう努めなければなりません。(努力義務)
保健指導では、単に専門家からの指示を受けるだけではなく、従業員自身が生活習慣を見直し、自ら健康の健康のために自主的な行動ができるような支援を行います。
【健診結果を労基署へ報告する(一部の企業のみ)】
常時50人以上の従業員を使用する事業者、特殊健康診断を行った全ての事業者の場合は、定期健康診断の結果(「定期健康診断結果報告書」)を、速やかに、所轄労働基準監督署長に提出する必要があります。
「定期健康診断結果報告書」とは、健康診断を受診した従業員数、有所見者(異常が見つかった人)などをまとめた報告書のことです。
様式のダウンロードはこちら↓
いかがでしょうか?
従業員の健康管理のため、そして、従業員の健康状態を把握し、適切な配置転換を行うため、定期的に健康診断のルールを見直しておきましょう。
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