会社の賞与時期は、会社によって様々ですが、一般的には夏期ボーナスが7月頃、冬期ボーナスが12月頃とすることが多いようです。

夏期ボーナスの時期も近づく頃、そろそろ賞与について考える方も多いのではないでしょうか?

ということで、今回は、賞与(ボーナス)について、その目的や、賞与制度導入の仕方、支払い方法について、徹底解説していきます(^^)

 

賞与とは?

 そもそも、賞与とは、どのようなものをいうのでしょうか?

 

賞与とは、「定期または臨時的に、原則として労働者の勤務成績に応じて支給されるものであって、その支給額があらかじめ確定していないもの」をいい、一般的には、「ボーナス」、「夏期手当」、「期末手当」、「一時金」などという名称で支給されています。

 

しかし、どのような名称で支給されているかに関わらず、各法令により賞与の定義が定められています。

税法関連 定期給与とは別で支払われるものや、一時的、臨時的に支給される金銭は賞与となる。
健康保険、厚生年金

予定回数が年4回以上 → 月次給与

予定回数が3回以下 → 賞与

雇用保険 料率が一定のため、月次給与と賞与に違いはない。

 

所得税上では、定期給与以外の一時金を賞与として扱い、源泉所得税の計算方法に違いを設けていますが、年末調整の際には合算して「給与所得」となり、源泉所得税の清算を行うため、月次給与と賞与の違いについて、明確な定義はありません。

 

また、雇用保険についても、料率が一定であることから、月次給与と賞与の違いに明確な定義はありません。

 

一方で、健康保険、厚生年金保険では、月次給与と賞与について明確な違いがあります。

健康保険、厚生年金保険上で、賞与とは、「一時的に支払われる金品であって、予定回数が3回以下のもの」があてはまります。

逆に、年4回以上の賞与が予定されている場合は、名称が「賞与」とされていたとしても、すべて月次給与あつかいとなります。

 

会社で支給している一時金がある場合は、それが賞与なのか、それとも月次給与なのか、ということをまずは確認しておきましょう!

 

なぜ賞与を支給するのか、賞与を支給するメリット

 労基法上は、賞与も賃金の一部ですが、賞与を支給するかしないかは会社の自由です。

賞与は、本来会社に支払い義務はないですが、労働契約において合意した場合にその義務が発生します。

 

賞与を支給する目的としては、会社の業績、社員の勤務成績、会社への貢献度のほか、長期雇用を前提とする基本給の後払い(業績が悪ければ支給しない)などがあげられます。

 

そのため、賞与の具体的な額や算定方法が定められてなく、就業規則等に「会社の業績、各人の勤務成績、会社への貢献度などを考慮して支給する」などの抽象的な定めになっている場合には、実際に具体的な決定がされない限り、社員に賞与請求権は発生しないことになります。

 

しかし、会社として賞与を積極的に活用することで、従業員のモチベーションアップにつながるなどのメリットもあります。

また、賞与制度があることで、他社と比べ求人において有利となるなど、人材確保に役立ちます。

毎月決まった額を支払う義務がある月次給与とは違い、金額の調整が可能であるという点においては、賞与を活用するメリットは大きいでしょう。

 

どうやって賞与を支給するのか

 賞与は、毎月の賃金と同じく、労働基準法上の賃金ですので、その支払い方法についても、通貨払い、直接払い、全額払いの原則が適用されますが、賞与の性格から、毎月および一定期日払いの原則については適用がありません。

つまり、賞与は、「通貨」で、「直接」労働者に、「全額」を支払う必要があります。

 

また、賞与を支給する際には、トラブルを防ぐためにも、あらかじめ、支給対象となる従業員の範囲、支給対象基準、支給対象期間、支給日(年1回支給とするのか、年2回以上の支給とするのか)などを定めておきましょう。

 

賞与を支給する時のポイント

賞与制度を規定

 賞与を支給するかどうかは会社の自由ですが、賞与制度の定めをする場合は、賞与に関する規定を就業規則等に定めておきましょう。

 

就業規則等に賞与に関する事項として、どこからどこまで記載するべきなのかは、明文上明らかではありませんが、一般的には次のような項目を規定します。

  1. 賞与の支給対象
  2. 賞与の支給回数および支給時期
  3. 算定方法および算定基礎期間
  4. 査定の基準および査定者
  5. 退職者、長期欠勤者、休職者などの取り扱い

 

賞与規程に記載する内容としては、トラブルを未然に防ぐ観点から、次のような条項を採用しています。

【賞与規程のモデル条項】

(賞与)

第〇条 賞与は、①会社の業績、社員の勤務成績、会社への貢献度などを考慮して支給する。ただし、会社の業績の著しい低下、その他やむを得ない事由がある場合には、支給時期を延期し、又は支給しないことがある。

2 前項の賞与の支給額は、会社の業績に応じ、社員の能力、勤務成績、勤務態度等を考慮して、各人ごとにその都度決定する。

3 賞与の算定対象期間および支給日は、②原則として下記の通りとする。

算定対象期間 支給日
1月1日~6月30日 7月10日
7月1日~12月31日 1月10日

4 賞与は、前項で定める③支給対象期間に全て在籍し、かつ、支給日に在籍する社員に支給する。

 

会社の業績、社員の勤務成績、会社への貢献度などを考慮して支給

賞与を支給する際の基準については、会社の業績や社員の勤務成績や貢献度など、考慮するための材料となる事項を盛り込んでおきましょう。

 

原則として

上記のように支給時期を明記する場合は、会社の業績の著しい低下などのやむを得ない事情がある場合は、支給時期を延期したり、支給しないことがあることから、このように追記しておきましょう。

 

支給対象期間に全て在籍し、かつ、支給日に在籍する社員

賞与の対象となる従業員の範囲は明確に定めておきましょう。

また、賞与規程のある就業規則等が全従業員を対象としている場合は、賞与を支給する対象となる従業員は、正社員のみなのか、それとも有期契約社員やパートアルバイト等も対象になるのかどうか、ということを定めておきましょう。

こちらを明示していない場合は、原則として全従業員に適用されることになります。

 

 

賞与の計算方法

 賞与の計算方法は、月次給与の計算方法とは少しだけ違います。

 

支給項目

 賞与は、会社が賞与支給のありなしを決定し、その金額についても会社が決定します。

なので、その金額についての内容や内訳を従業員に説明する義務はありません。

しかし、あらかじめ賃金規程や雇用契約書に計算の根拠が明示されている場合であって、その内容に反する計算方法を用いる場合は、従業員に事前に説明をしたうえで、同意をとっておきましょう。

 

控除項目

 賞与から控除する項目は、健康保険料(介護保険料)、厚生年金保険料、雇用保険料、所得税があります。

それぞれの控除の方法を確認しておきましょう。

 

健康保険料(介護保険料)・厚生年金保険料

 賞与にかかる健康保険料、厚生年金保険料は、「標準賞与(賞与額から1,000円未満の端数を切り捨てた額)に保険料率を乗じた金額」となり、この金額を事業主と労働者本人で折半負担します。

実際には、折半した金額を、従業員それぞれの賞与額から社会保険料として控除します。

【標準賞与額の上限に注意】

「標準賞与額」には上限が定められていますが、健康保険(介護保険)と、厚生年金保険では上限の設定が異なります。

「標準賞与額」=賞与額から1,000円未満の端数を切り捨てた金額

  • 健康保険(介護保険) → 年度(毎年4月1日~翌年3月31日)の累計で、573万円
  • 厚生年金保険 → 1カ月の合計で150万円

また、事業主のみ「子ども子育て拠出金」として、標準賞与に保険料率を乗じた金額を負担します。

保険料率は、「賞与支給月の月末時点のもの」を適用します。

社会保険料は、毎年見直されますが、令和4年度の保険料は、次の通りです。

【令和4年度の社会保険料】
  • 健康保険料(協会けんぽ)・・・9.51%~11.0%(都道府県ごとに異なる)
  • 介護保険料(協会けんぽ)・・・1.64%(全国一律)
  • 厚生年金保険料・・・18.3%(全国一律)

 

雇用保険料

 賞与にかかる雇用保険料は、月次給与と同様で、「総支給額(賃金総額)✕保険料率」にて算出し、この金額を事業主と労働者本人がそれぞれ負担します。

実際には、労働者負担分の金額を、従業員それぞれの賞与額から雇用保険料として控除します。

令和4年度から雇用保険料率が変更となり、更に10月から保険料が変更となりますので、注意が必要です。

【令和4年度(令和4年4月~9月まで)の雇用保険料】
  労働者負担分 事業主負担分
一般の事業 3/1,000 6.5/1,000
農林水産・清酒製造の事業 4/1,000 7.5/1,000
建設の事業 4/1,000 8.5/1,000
【令和4年度(令和4年10月~令和5年3月まで)の雇用保険料】
一般の事業 5/1,000 8.5/1,000
農林水産・清酒製造の事業 6/1,000 9.5/1,000
建設の事業 6/1,000 10.5/1,000

 

 

所得税

 賞与にかかる所得税率は、「前月の月次給与」と「扶養親族の数」によって決まります。

「前月の月次給与」が多く、「扶養親族の数」が少ないほど、所得税率は高くなる仕組みです。

賞与にかかる所得税の計算方法は、少し複雑ですので、手順を踏んで進めていきましょう。

 

【ステップ1】「前月の月次給与」と「扶養親族の数」から「賞与に対する税率」を求める

 まずは、「前月の月次給与」から社会保険料(健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、雇用保険料)を差し引いて、「社会保険料控除後の給与金額」を求めます。

そして、国税庁が公表している「令和4年度 源泉徴収税額表」から、「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を参照し、「前月の月次給与」から算出した「社会保険料控除後の給与金額」と「扶養親族の数」から「賞与に対する税率」を確認します。

 ※「扶養親族の数」は、扶養控除等申告書により申告された扶養親族等から求めます。

上記の表の通り、「前月の月次給与」から算出した「社会保険料控除後の給与金額」が250,000円で、「扶養親族の数」が一人だった場合、「賞与に対する税率(賞与の金額に乗ずべき率)」は、「4.084%」ということになります。

 

【ステップ2】「社会保険料控除後の賞与金額」×「賞与に対する税率」で所得税額を求める

次に、賞与の額から社会保険料(健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、雇用保険料)を差し引いて、「社会保険料控除後の賞与金額」を求めます。

そして、「社会保険料控除後の賞与金額」に、上記で求めた「賞与に対する税率」を乗じて、所得税額を求めます。

 

【計算式の例】
  • 「前月の月次給与の額」=250,000円
  • 「前月の月次給与」の社会保険料=38,175円(健康保険料12,500円、介護保険料2,050円、厚生年金保険料22,875円、雇用保険料750円)
  • 「扶養親族の数」=1人
  • 「賞与の額」=300,000円
  • 「賞与」の社会保険料=45,810円(健康保険料15,000円、介護保険料2,460円、厚生年金保険料27,450円、雇用保険料900円)

250,000円(前月の月次給与)ー38,175円(社会保険料)=211,825円(社会保険料控除後の給与金額)

「扶養親族の数」は、1人なので、「賞与に対する税率」は、「2.042%」

300,000円(賞与の額)ー45,810円(社会保険料)=254,190円(社会保険料控除後の賞与金額)

254,190円(社会保険料控除後の賞与金額)×2.042%(賞与に対する税率)=5,190円(小数点以下は切捨て)

よって、賞与にかかる所得税額は、5,190円となります。

 

いかがでしたか?

 

今回は、賞与について深堀して解説していきました。

求人や人材確保、従業員のモチベーション向上のため、賞与の支給を考えている方や、従来の制度から見直しを検討している方は、この機会に、支給の目的や活用方法、賞与の計算方法のなどを再確認しておきましょう。

 

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