この「欲しい人材を採用するコツ」シリーズでは、これまで①採用プロセスの全体像から、②欲しい人材の人物像を明確にする方法、③欲しい人材へアピールするための自社の魅力の引き出し方、④求人募集と選考方法(書類選考・適性検査)について説明してきました。
さて、「面接で何を聞いたらいいか分からない」「面接の時の印象と入社後の態度が全然違う」「面接で確認不足だったために入社後トラブルが発生し早期離職された」など面接がうまくいかず困ったことはありませんか?
面接で応募者にしっかりと確認することで、入社後のトラブル防止やミスマッチを防ぐことができます。
今回は最も難しいと言われる面接について、面接手法や選考ポイントについて説明していきます。
目次
面接する前に準備しておくこと
取引先と打ち合わせするのとは違い、応募者を面接する前に準備しておくべきことがあります。
面接会場の準備
面接会場は、応募者にとって会社の印象を大きく左右します。
特に個人面接をおこなう場合は、できれば社内で一番立派で装飾や照明が落ち着く雰囲気のところがよいでしょう。来客に使用する応接室でも構いません。少なくとも粗末な作業部屋などでは、真剣な気持ちで面接に来る応募者は「自分を大切に扱ってくれない会社」と受け止め、敬遠してしまう恐れがあります。
応接室がない場合は、面接スペースを整理整頓しパーテーションで区切るなどして、静かで落ち着いて話ができるスペースを確保しましょう。
従業員への周知
面接をおこなう日は、事前に従業員たちに周知しておくのがよいでしょう。
応募者は面接先の企業の従業員をよく見ています。従業員が取引先の陰口を言っている現場や態度のよくない従業員を目にしたら、志望度は下がってしまいます。
日頃から従業員の態度や言動に関する教育も必要ですが、これから同僚になる可能性のある人物が来る面接の日は特に、従業員にも言動や態度に気を付けるよう意識づけをしましょう。
面接官の心構え
面接の目的は応募者から本心の回答を引き出し、採否の判断をすることです。
そのためには応募者が話しやすい環境を整える必要があります。厳しい表情や矢継ぎ早に質問を繰り返すような面接では応募者も形式的な回答に終始してしまう恐れがあります。
応募者の本心を引き出すためのコツは、
①先入観で判断せず真摯な気持ちで面接する。
②応募者の回答に共感し(共感する姿勢を見せ)信頼関係を築く。
③経歴だけでなく、これまでの経験や人間性の良い部分に着目する。
ということが大切です。
注意!面接官が陥りやすい傾向
面接官の個性や考え方で採否が異なる場合があります。全体のバランスを見て評価することを心がけましょう。
人を判断する際に陥りやすい傾向をお伝えしますので、下記の傾向に陥らないよう面接時に意識し、判断ミスを防ぎましょう。
ハロー効果
1点が優れているとすべてがよく見えてしまう、逆に1点に問題があるとすべてが悪いと判断してしまうことをハロー効果といいます。
学歴や前職の企業が優れていると、すべての点が優れていると判断するのではなく、これまでの経験から何ができるのか、自社でどう活躍できそうかを見極めることが必要です。
中心化傾向
評価が中心的な位置に集中してしまい、可もなく不可もない「普通」と判断してしまう傾向をいいます。
対比誤差
直前に面接した応募者の影響が強く対比してその後の応募者を判断してしまう傾向をいいます。直前の応募者が優れていれば次の応募者の能力を過小評価してしまう、あるいはその逆もあります。
また、面接官の特性と異なる人材を低く(または高く)評価してしまう傾向もあります。
寛大化傾向
職務と関連しない話で盛り上がると甘い評価をつけてしまう傾向をいいます。
例えば、面接官と出身地が同じ、出身大学や高校が同じ、同じ趣味、住まいが近いなど共通点があるとつい評価が甘くなってしまいがちです。
気持ちを和らげるために職務と関連しない話も必要ですが、その内容に引きずられずに見極めることが必要です。
熱意評価傾向
応募者が自社への思いが強いことは一定の評価をすべきですが、思い込みが強いと、入社後実態とのギャップに戸惑い退職してしまいます。実態をきちんと説明し理解した上で入社させる必要があります。
面接官の好感度を上げるポイント
面接の場は面接官が応募者を判断するだけの場ではありません。応募者も面接官をしっかり見ています。
応募者が面接官を通じて企業イメージを持つことを考えると、面接官自身の好感度を上げることも大切です。
好感度を上げるために面接官が意識するポイントは以下のとおりです。
①清潔感のある服装 ②仕事を中座して片手間で面接をしている印象を与えない ③ゆったりと落ち着いた態度、聞き取りやすく明瞭な話し方 ④応募者の回答を受け止め、否定しない ⑤プライベートな内容を興味本位で質問しない ⑥応募者の質問には親身に・真摯に回答する。 |
注意!面接官の態度は、応募者にしっかり見られています。
面接官が応募者を観察するように、応募者も面接官をよく見ています。
面接官が採用と決めても、面接官の態度や印象が悪いと内定を辞退されてしまう恐れがあります。面接官は選ばれる立場でもあるのです。
横柄な態度は論外ですが、言葉遣いや表情、態度は面接する側も意識する必要があります。丁寧な言葉遣いだけでなく、高圧的な態度や足を組みながらの質問など、相手を不快にさせる言動や態度は控えましょう。
だからといって応募者のご機嫌伺いをする必要はありません。面接は、お互いの本心を知る場であるという意識で誠実に対応すればよいのです。
一方で、面接官は自社の広告塔という側面もあります。応募者にとっては面接官=会社のイメージになりうるのです。不採用となった応募者が、のちの顧客になる可能性も十分にあります。不採用になった腹いせに応募した企業の陰口を言いふらす可能性もないとは言えません。
採用する側は応募者より立場が強い、と上から目線で応募者に接するのではなく、適度な距離感と敬意をもって接するといいでしょう。
面接の手順
面接は会社や職種の説明により異なりますが、長くても40分程度でおさめましょう。長すぎると集中力が欠けてしまい本質が見抜けません。短すぎても応募者を理解するのは難しいです。
面接の時間配分の目安は、
前半(10分) | 自己紹介、志望動機、退職理由、自己PRといった定番質問。仕事内容などもいいでしょう。自社に見合う人材かどうかを検討します。 |
中盤(10~20分) | 前半の質問に関連した質問や、さらに深い質問をおこない、応募者を見極めます。前半での判断に間違いがないか見極める時間でもあります。 |
後半(10分) | 応募者からの質問を受け付ける。入社意欲を探り、最終的な採否の判断をおこないます。 |
Q&A形式で終わらせない!応募者の本質と回答の信憑性を探る方法
面接官が質問し、応募者が答えるのは面接の基本ですが、1対1の質疑応答を繰り返すだけでは応募者の心の中にある本心や本質を見るのは難しいです。
そこで、面接官は応募者の回答を聞き流すだけでなく、回答内容に興味を持ち、さらに深堀りし質問を繰り返していくこと、つまり、言葉のキャッチボールをすることをお勧めします。
そうすることで応募者が自分の言葉で語り、本心をさらけ出す状況ができます。そうして出てきた回答内容から本質や信憑性を見抜くことができるのです。
(参考)6種類以上ある面接方法
面接には大きく分けて2種類、個人面接と集団面接があります。
個人面接は(説明する必要はないかもしれませんが)、応募者を1人ずつ読んで面接する手法です。面接官は1人または複数人でおこないます。
集団面接は、応募者を複数人集めて一度に面接することです。この中に応用技法として圧迫面接やディベート面接などがありますが、一般的には複数の応募者を横一列に並べ、順番に質問していくことをいいます。
集団面接は、応答内容や態度を相対的に比較検討できるメリットがありますが、答える側は前の人の発言に影響されたりして自分を出せない懸念もあります。
(参考)集団面接の応用技法
応募者が多数いる場合など、活用する価値がある手法の代表的なものを紹介します。
ロールプレイング面接
ロールプレイングとは、役割演技法とも呼ばれ、一般的には営業職者などの訓練に使われています。
例えば、営業と顧客に分かれてそれぞれの役割を演じてもらい応募者の対応をみます。演技の良し悪しを見るのではなく、達成意欲や粘り強さ、対応力、アイディア力や将来性を判断します。
圧迫面接
突然怒り出したり議論を吹きかけたりして応募者を自然な状態ではいられなくすることで、その反応を見て人物の本質を知ろうとするものを圧迫面接といいます。
取り繕って本心が見えない相手などには効果が見込めるかもしれませんが、対応によってはケンカになったり、良い人材を去らせる懸念があるので慎重におこなう必要があります。
プレゼンテーション面接
一言で言うと、売り込み面接のことをいいます。自分や何かの商品を売り込ませるプレゼンテーションをさせることで、表現力や説得力、判断力、アイディア力などを見るものです。
ただし、この手法は慣れが大きく影響するため、通常の面接のほかに参考程度でおこなうのがいいでしょう。
ディベート面接
集団討論面接のことをいい、2組のグループに分け、あるテーマについて賛成派と反対派としてグループ同士の討論をさせ、時間になったら賛成派と反対派を交代させて再び討論させるものです。
リーダーシップ能力などを見るのによいとされていますが、面接官には客観的に判断する能力が求められます。また、集団ではなく個人対個人のディベートというやり方もあります。
最後に
面接は採用において最も大切なプロセスです。書類だけでは見極められない応募者の本質を見極め、求める人材にふさわしいかを短時間で判断しなければなりません。
人が人を判断する難しさはありますが、面接だからこそ書類では引き出せない応募者の本質を探ることができるのです。
そのためには、応募者が話しやすい環境を整え、応募者から本心の回答を引き出すことが求められます。
今回説明したことを実行し、応募者がよりリラックスして本心をさらけ出すことができれば、面接は成功と言えるでしょう。
採否の判断は面接終了後にできます。面接の時間は、応募者の経験や人間性の良い部分を引き出すことに集中し、求める人材の採用へつなげていきましょう。
次回は、面接でどのような質問をし、どう判断したらいいかを具体的にお伝えしていきます。
(これまでの「採用のコツシリーズ」の記事はこちら↓)
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