前回のブログ(リンク)では、面接をおこなう前にやるべき準備事項について説明しました。

 今回は採用に失敗しないための質問方法や、そこから判断すべきポイントについて説明していきます。

 

知りたいことを知るための質問法 ~これを聞けばこれが分かる~

 限られた時間で応募者の本質を知るためには、効果的な質問をすることが大切です。

 代表的な質問内容と、そこから知ることができる事柄について説明していきましょう。

志望の真剣度を知るには

 志望動機の質問は、自社への関心度合いを知る上で最も大切です。

 「志望動機は何ですか?」の一言でも構いませんが、「できるだけ具体的に話してください」と付け加えることで、より詳しく話してもらうことができます。

志望動機から掘り下げた質問をし、目標・意欲を聞きましょう。

 「採用されたらどんなことをやりたいですか?」と聞くことで、入社意欲ややる気を知ることができます。

 必ずしも希望に沿った業務ができるわけではないため、こだわりの強すぎる回答には注意が必要です。

 さらに「希望の職場に配属されなかったらどうしますか?」と聞くことで、柔軟性や適応力を知ることができます。

 

経験や仕事への興味を知るには

 新卒者には大学(高校)での専攻(得意科目)を聞き、募集職種と適性のミスマッチがないか確認するといいでしょう。

 中途採用者には、これまでの職務経験について簡単に説明してもらい、気になった部分をさらに詳しく話してもらうといいですね。

 質問例:「これまでの職務経歴について簡単に説明してください」「応募した職に関連する職務について詳しく教えてください」「あなたの経歴の●●について、具体的に説明してください」

 

仕事に取り組む姿勢を知るには

 「辛い(苦手)と思った仕事」について聞くことで、意に沿わない仕事への取り組み姿勢や、苦難の体験をプラス材料として役立てているかを判断することができます。

 質問例:「これまでで最も苦しかった仕事について教えてください」「苦手だった仕事にどのように取り組んできたかを説明してください」

 回答が、苦労話で終わっている、他者の批判ばかりする、環境のせいにする、という場合は要注意です。苦労の中からどのような対応で乗り越えたか、何を学んだか、どんなことに気付いたかなど、苦労を糧にできる人材であることが望ましいです。

 

自己啓発についての質問は興味や実績を知るのに効果的

 表彰や資格、自己啓発に関する質問は嘘や装飾のしにくい質問です。具体的に答えてもらうことでその人の本質ややる気を知ることができます。

 質問例:「仕事以外の分野でこれまでどのような勉強をしてきましたか」「これまで自己啓発に取り組んできたことを教えてください」

 

信憑性を確認したいとき聞くとよいこと

 職務経歴書には実績などをオーバーに表現したがる人もいるため、疑問点や関心を持った点は掘り下げて聞くことをお勧めします。

 誰にも負けない知識や特技、キャリアについて聞き、その根拠を説明してもらいましょう。具体的な回答であれば信憑性も高く、得意分野や自信を持って取り組めるものを知ることができます。

質問例:「あなたが特に優れていると思う能力について説明してください」「特技は何ですか?具体的に説明してください」「職務経歴書に書いてある●●について詳しく教えてください」

 

募集している職種との適性を知るには

 面接の場だけで適性を知ることは難しいですが、応募者の好きなことややりがいのあることは判断材料となり得ます。なぜなら、人間が行動を起こす原動力は「理論」よりも「感情」の方が強いからです。

「これまで楽しかった仕事や、やりがいのあった仕事」を聞くことで、応募者のモチベーションが上がる要素を知ることができます。

 

人柄を知るには

 まず確認すべきは精神的に自立している人物かどうかです。厳しい・優しい・明るい・冷静などの表面的なものではなく、自己を抑えて相手を思いやれる人柄であることは、社会人として大切な素養です。

「自身の性格について、人から何か言われたことがあるか、そのときどう思ったか」をたずねることで、客観的に自分を認識できるか、相手の意見を率直に受け入れることができるかを知ることができます。

「過去の上司で良い上司と悪い上司を1人ずつあげてください」とたずね、悪い上司についてどう答えるかを見るのもいいでしょう。熱くまたは冷ややかに話す場合は、悪いのは自分ではなく他者であるという責任転嫁の傾向があると思われます。

「上司と意見が合わない場合はどうするか」を尋ねると、応募者の仕事における考え方や行動の癖を知ることができるでしょう。

 また、多くの面接で見られる「長所や短所を問う質問」は、長所や短所を把握するための質問ではありません。「自分自身をどの程度理解しているか」や「答える内容からにじみ出る人柄」を知るための質問であることを意識しましょう。

 

話力・説得力を知るには

 チームワークでおこなう業務では説得力や説明する力が求められます。話上手か、口が達者かではなく、相手を納得させ行動を起こさせる話し方ができるかどうかが大切です。

 話下手であっても、熱心で誠意が感じられるかがポイントになります。

 上記に挙げた質問に対する答え方である程度は予測できますが、複数の応募者を同じ基準で判断するなら、「面接官が述べる意見に反論させ、その理由を述べさせる」「地図を見せるなどして、道順を分かりやすく・簡潔に人に教えるように説明させる」などで比較してみるといいでしょう。

 回答が簡潔で分かりやすいか、相手に寄り添った発言ができるか、知識をひけらかすか等を知ることができます。

 

理解力・対応力を知るには

 仕事では「いざという時」「不測の事態」がたまに起こります。そういった際に安心して任せられるかを判断するためには臨機応変に対応できる力を確認します。特に管理者やリーダーなどのポジションに就く人がどんな対応をするのか、「困って何もできなくなるタイプか」「テキパキ判断できるタイプか」を知ることも必要でしょう。

 責任感を持って、状況を理解し冷静かつスピーディに対応できる人物に仕事を任せたいものです。

 不測の事態が起きた場合どう対応するかを質問し、その反応を見ることで、長時間考えてからでないと答えがないのか、即座に具体的な対応策が言えるのかを見るといいでしょう。

 質問例:「携帯電話を自宅に忘れて、通勤途中に遅刻することに気付いた時、あなたならどうしますか?」

    「明日の納品期限に間に合わなくなった場合、あなたならどうしますか?」

 

仕事や生き方に対する姿勢を知るには

 仕事に対する姿勢を聞きながら、仕事能力や責任感、向上心などを見ます。回答に対し突っ込んで深く聞いてみることで、本人の実態を知ることができるでしょう。

 転職者へは前職の退職理由を聞くのがオーソドックスかつ最も本質が分かります。原因を掘り下げていくことで当人に問題があるのかどうかも知ることができます。まれに腹を立てる者もいますが、それも人物の判断材料になるでしょう。

 また仕事をする目的を聞くことで、その人の人生観が垣間見ることができます。そこに向上心や社会のためという意識があるかを見るのもいいでしょう。

 質問例:「前職の退職理由を聞かせてください」「(前職に)残ろうと思わなかったのですか?」「退職を決意したきっかけは何ですか?」「(前職に不満があり退職した場合)退職以外に解決策はなかったのですか?」

 「あなたにとって働く意味は何ですか?」「あなたにとって仕事とは何ですか?」

 

行動力や積極性を知るには

 一般的に行動力や積極性はある方がいいと思われます。

 では、猪突猛進タイプはどうでしょうか?消極的よりはいいと思う人もいれば、何をやらかすか不安だからいやだと思う人もいるでしょう。

 「あなたの性格で良かったと思うところ、反対の性格だったら良かったと思うところ」と理由を聞くのもいいかもしれません。

 このように、判断が分かれるテーマで、必ずしもどちらかが良いと決められない要素については、中小企業の場合「社長はどちらを好むのか」で判断するといいでしょう。社長の好みを反映させることが中小企業の採用のポイントになることもありますので、採用担当者は社長の好みを把握しておくことも必要です。

 

自信のない返答や本心かどうかを見抜くには

 応募者は、面接者の気に入る答えを考えて返答しがちです。

 そこから本心を知るには、返答する時の表情や言葉に注目することが大切です。自分の実態と異なる返答には自然とためらいや自信のなさが表情や言葉・態度表れます。

 逆に、慣れている場合は自信たっぷりに答えますが、それが不自然に見えることもあります。

 返答に違和感を感じた時は、「なぜ」「どうして」と掘り下げて聞いてみるといいでしょう。

 どう答えたら合格なのか迷う質問をいくつかぶつけ、さらに理由を掘り下げることで、正直に答えざるを得ない状況に誘導する方法もあります。

 正解が分からない質問に自然に答えることができるなら、誠意をもって本心を答えていると判断できるでしょう。

 

自己PRで見極めるポイント

 自己PRでは、実務面でどのように活かせるか、仕事への熱意、入社意欲を見極めることができます。

 具体的な事例を盛り込みながら発揮できる職務能力をアピールできていれば、自社で活躍できる人材と判断できるでしょう。

 また、自己PRの内容からコミュニケーション能力も確認することができます。伝えたいことが伝わってくる内容であれば合格と言えます。

 熱意は感じるものの何を伝えたいか分からないときば、具体的な経験を語ってもらうよう促すのもいいでしょう。信憑性に疑問を感じたときは、周囲がどのように評価しているか、具体的な実績などを尋ねて確認する方法もあります。

質問例:「自己PRを(●分以内で)お願いします」「●●(取った行動)とおっしゃいましたが、具体的にどのようなことをしたのか教えてください」「●●(性格等)とおっしゃいましたが、具体的なエピソードがあれば教えてください」

 

面接の最後に質問をして、応募者の本音を見ましょう

 面接官からの質問をすべて終えたら、面接の終了を伝えると同時に「最後に何か聞きたいことはありませんか?」とたずねましょう。これまでとは言葉遣いや態度を変え、親しげに話しかけるのがポイントです。

 これにより、応募者に面接は終わったという安堵感を与え、反応と本心を見ることができます。

 緊張が解けると、途端に給与や休み・勤務時間など「自分が損しないように」という意識が出てきたり、仕事の内容や会社の方向性など向上心を持った質問を始めたりと、本音が出やすくなります。

 意図が分からない質問が出たら、理由を聞くなどして掘り下げましょう。そこで不快な態度を示してはいけません。

 また、何も聞いてこない場合は雑談を通じて心を開かせ、言い出しにくい疑問や質問を出させるといいでしょう。最後の最後に本心を知ることができたり、応募者の本質を見ることができるため、採用を判断する大きな評価ポイントとなりえます。

 人は緊張しているときとリラックスしたときでは大きな変化を見せるものなのです。

 

最後に面接の終了と、結果の通知方法を伝えましょう。

 一通り質問が終わったら、面接の終了とともに結果の通知方法を忘れずに伝えます。

 面接後何日後までに、どんな方法で結果を通知するか、次回は役員面接や最終面接がある場合はおおよその日程を伝えましょう。

 応募者は複数の企業に応募している可能性があります。採否結果がいつくるか分からないために別の会社の採用内定に返事をしてしまい、次回の面接や採用通知を出した時にはすでに他社への入社が決まってしまった、ということのないように、採否結果の通知する時期を伝えておくことが大切です。

 

必見!面接で聞いてはいけない14項目

 これまでの記事でも、合理的な理由なく性別で業務内容や待遇に差をつけたり、年齢を理由に応募の拒否や採否を決定することは禁止されていることは説明してきました。

 ほかにも、以下のような就職差別につながる恐れのある事柄について、応募用紙に書かせたり面接で質問することは禁止されていますので、必ず確認してください。

本人に責任のない事項の把握

●本籍・出生地に関すること
●家族に関すること
●住宅状況に関すること
●生活環境・家庭環境などに関すること

本来自由であるべき事項の把握
(思想・信条にかかわること)

●宗教に関すること
●支持政党に関することの把握
●人生観・生活信条などに関すること
●尊敬する人物に関すること
●思想に関すること
●労働組合
(加入状況や活動歴など)、
学生運動などの社会運動に関すること
●購読新聞・雑誌・愛読書
などに関すること

採用選考の方法

●身元調査などの実施
●本人の適性・能力に関係ない事項を含んだ応募書類の使用
●合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施

 

最後に

 限られた時間で相手の人となりをすべて理解することはできません。

 しかし、考え方や価値観、行動特性などは質問の仕方次第である程度把握することはできます。

 それらの特性が、優劣ではなく、自社(や社長の好み)に合うか、業務に意欲的に取り組めそうか、今いる社員とうまくやっていけそうか、自社の業績向上に貢献してくれそうか等を見極め、企業側も応募者側も満足できる採用につなげていきましょう。

 次回は、面接結果に基づく採用決定方法と、内定者フォローについて説明していきます。

(これまでの「採用のコツシリーズ」の記事はこちら↓)

(面接を成功させるためにやるべき準備)採用のコツ⑥

(選考方法その1:書類選考と筆記試験)採用のコツ⑤

(効果的な求人募集方法とは)採用のコツシリーズ④

(応募者が集まる求人票の書き方)採用のコツ③-2

(欲しい人材へ自社をPRする方法)採用のコツ③

(欲しい人材を明確にする方法)採用のコツシリーズ②

(採用の手順)採用のコツシリーズ①

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